「非空」
  大阪芸術大学大学院グループ展

「非空」

「非空」とは今見ている世界が現実か、それとも、幻かか、よく分からない状況のことをいう。仏教用語の非空非有からきている。
この世界、己以外は全部幻影なのかもしれないなど、そのような妄想を誰しも一度は抱いたことがあるのではないのだろうか。
コロナウイルスが突如現れ、2年もの長い年月がコロナに縛られる中で、我々の生活様式も好む好まざると変化を強いられてきた。家に閉じこもり、外の世界へ行くのも望望めず。まるで「トゥルーマン・ショー」という映画のように誰かが創り出した巨大なセットの中で生活していく上で、この感覚は猛烈に感じている。
驚き、怒り、悲しみ、そして恐怖、複雑な感情が交差する日々。テレビで緊急事態宣言、時間短縮、自粛などのワードをよく耳にしない日はない。そして、日常の中で非日常を味わえるものが多くなってきたことも、また事実としてある。
しかし、雨の日には雨の日の風景があり、コロナ禍の中でも自分たちが住んている周辺の環境がどう変化したのかを知りたいという思いから、気分を切り換えて、作品作りに没頭し始めた。
そうした瞬間に、まるで今まで頑なに閉ざしたドアの隙間から一筋の光が差し込んできたように思えた。弱々しい光だけれど、まばゆい。勇気を振り絞ってドアを開いてみたら瞬間に全身が暖かい光に包まれ、希望の未来へと誘われる。決して忘れることのないこの2年間の記憶、素晴らしい未来を紡いてくれることを心から願っている。
本展では、大阪芸術大学大学院の写真学科および芸術学科の学生11名が、コロナ渦の「沈黙の2年間」の歳月を精魂を込めて作品にまとめ展示する運びとなった。これらの作品が、少しでも皆様と心が共鳴することができたならば、この上にない喜びであり、感謝の念に堪えない。